#34 乗鞍の在来種を守るために 外来種について知っておきたいこと。

外来種とは、もともとそこになかったのに、人間の活動によって外国や他の地域から入ってきた生物のこと。その一部は繁殖力が非常に強く、生態系のバランスを乱して在来の生物に悪影響を及ぼすとされています。乗鞍高原でも外来種の植物が年々繁殖域を広げており、地元有志による駆除活動が毎年行われています。しかし、外来種の繁殖スピードに駆除スピードが追い付かない現状があり、この事態を地元ではとても憂慮しています。外来種の何が問題で、私たちにどんなことができるのか?外来種について改めて知っておきたいことについて取り上げます。

乗鞍の在来種を守るために
外来種について知っておきたいこと

❶外来種はどこから?なにがいけないの?
❷乗鞍高原に拡がる外来種の現状
❸外来種をこれ以上拡げないため 私たちにできること
❹外来種駆除活動に参加してみよう

❶ 外来種はどこから?なにがいけないの?

外来の植物は、自然と運ばれてくるのではありません。人の移動と共にタイヤ・靴の底・荷物・工事の土などに紛れて、その種が運ばれてきます。特に繁殖力の強い外来種が増えることで、在来の植物から生息環境を奪ってしまいます。また、近縁の種同士で交配が起こって雑種が生まれ、もともといた地域固有の遺伝子をもった固有種が失われる可能性も秘めています。

在来種が失われていくと、その植物と深い関係をもって生きている昆虫や、それを食べる動物たちにも影響が及び、もともとの生態系が乱れていきます。更に高山帯へ拡がっていくと、例えば乗鞍岳のシンボルでもある雷鳥の貴重な餌がなくなり、絶滅が現実化する事態に。また、高山植物の女王と呼ばれているコマクサも駆逐される危険性があります。これは、長い年月をかけてきたこの地域の進化の歴史がなくなってしまうことを意味します。そこで、国立公園にあり、保護すべき貴重な動植物が多数生息している乗鞍高原では、地域で共に生き、大切にしてきた貴重な在来種の生態系を次世代に残そうと、外来種の調査や対策に力を入れています。

外来種について知っておきたいこと

❷ 乗鞍高原に拡がる外来種の現状

乗鞍高原の外来種対策は、のりくら高原ミライズ構想協議会が主体となって進めています。侵入している外来種の種類・分布の調査、今後の対策の実施計画の検討を行いつつ、乗鞍地域本来の自然環境を守るために優先度を設けて対策を進めています。

乗鞍高原の外来種対策

現在までに分かっている、乗鞍高原内に侵入している外来種の分布については、こちらからご確認いただけます。
以下は乗鞍高原でマークしている主な外来種です。


1.特定外来生物

オオハンゴンソウ

オオハンゴンソウ

オオキンケイギク

2.総合対策外来種

外来タンポポ

コウリンタンポポ

オオバコ

オオバコ

フランスギク

フランスギク

ハルザキヤマガラシ

ハルザキヤマガラシ

アラゲハンゴンソウ

アラゲハンゴンソウ

3.産業管理外来種

ハリエンジュ

ハリエンジュ

4.その他

ブタナ

ブタナ

❸ 外来種をこれ以上拡げないため 私たちにできること

外来種対策の基本は、とてもシンプル。「入れない」「捨てない」「拡げない」です。(外来種被害予防三原則)

1.入れない…外来種を本来分布しない地域へ入れない。
2.捨てない…飼育・栽培している外来種を野外に捨てない。
3.拡げない…既に野外にいる外来種をさらにほかの地域に拡げない。

特に、他の地域を旅行する時には、荷物や土産物、それに付着した土などの中に、昆虫のような小動物や植物の種子などが紛れている可能性があります。意図せず持ち込まないように注意しましょう。

また、乗鞍高原から乗鞍岳まではバスでアクセスできるために、靴底などから容易に高山帯へと外来種の種が持ち込まれてしまいます。そこで、シーズン中は乗鞍観光センターの乗鞍岳畳平行のバス乗り場に、種子除去マットを設置しています。靴底についた土をよくぬぐってからバスにご乗車いただくことで、外来種の拡大予防につながります。

外来種種子除去マット

❹ 外来種駆除活動に参加してみよう

乗鞍高原では、ボランティアによる外来種駆除活動が毎年行われています。地元住民を中心に活動していますが、地域に関係する事業者や旅行者の皆さんなど乗鞍の自然を愛する方・乗鞍の自然を知りたい方など、どなたでも参加いただけます。

「のりくら外来種駆除」のFacebookページには、駆除活動へのお誘いや詳しい活動の様子が掲載されています。興味を持ってくださった方は、ぜひご一緒に取り組んでいきましょう!


いかがでしたでしょうか。外来種とはいえ、それは生物の命。もともとの生態系を乱すということで悪者にされてしまう存在ですが、一方的に外来種の植物が悪いわけではありません。外来種がここまではびこる今の環境を作ったのは……それは紛れもなく、私たち人間です。外来種の問題を通して、乗鞍の理想的な生態系や環境とは何か、そのために一人一人がこの地域とどう関わっていけるのかを、ぜひ私たちと一緒に考え・行動してみませんか?この外来種の課題に向き合うためには、できるだけ多くの人の力が必要です。皆さまのご参加、お待ちしております!